Muto Takashi

2本(日本)の映画

年末年始にAmazonプライムで2本の邦画を視聴しました。
最初の1本目は、年末の12月30日、Amazonプライムをなんとなくタイトルをダラダラと見ていたら、目に留まったのが『痛くない死に方』という映画でした。その日あと2時間ちょっとで配信終了とのことで、それに気づいて慌てて鑑賞することにしました。

在宅医療に従事する主人公は、日々仕事に追われる毎日で、家庭は崩壊寸前という状況の中、末期の肺がん患者と出会います。患者の家族の意向で「痛くない在宅医」を選択したものの、主人公は電話で曖昧な指示をしてしまい、結局、患者は苦しみ続けてそのまま亡くなってしまいます。「痛くない在宅医」を選んだはずなのに、結局「痛い在宅医」になってしまった。それなら病院のほうが良かったのか、病院から自宅に連れ戻した自分が殺したことになるのかと、患者の家族は主人公を前に自分を責めます。在宅医の先輩に相談すると、病院からのカルテでなく本人を見て、肺がんよりも肺気腫を疑い対応すべきだったと指摘されます。結局、自分の最終的な診断ミスにより、患者は不本意にも苦しみ続け生き絶えるしかなかったのかと、主人公は悔恨の念に苛まれます。先輩の元で在宅医としての治療現場を見学させてもらい、在宅医としてあるべき姿を模索することにする主人公。大病院の専門医と在宅医の決定的な違いは何か、先輩から学んでいきます。「人間を好きになれ!」という先輩のアドバイスによって変わっていく主人公。この言葉には私自身もドキッとさせられますが、2年後、主人公は同じく末期の肺がん患者を担当することに…あのダメさ加減から改心して成長していくのは、ドラマならではかもしれませんが、何かのきっかけで人生が大きく変わることはあると思います。
若手在宅医療の医師の成長に焦点を当てていますが、この映画はもしかすると、そうした医師たちに未来において頼ることになるであろう私たちに「覚悟」を促すものかもしれません。終末期をどのように迎えるか、それについて考えさせられます。親の死、自分の死、避けて通れない道。痛くない死に方が理想であるとしても、それは自分の力ではどうしようもなく、誰の責任でもないことを理解し、覚悟を持つための作品と感じました。

2本目は、配信終了が迫っていたわけではありませんが、タイトルがとても気になっていた『永い言い訳』。「ディア・ドクター」の西川美和さんが脚本・監督を務めたこの映画は、妻を亡くした主人公が、悲しみを感じることができない自分の在り方に向き合い、自己認識を深めて他者への愛に気づいていく物語です。
映画を観終えた後、ネット上で西川監督のインタビュー記事を見つけました。「3・11の大震災を経験した後、大切な人との愛に包まれた別れではなく、後味の悪い別れ方をした人の物語を描いてみたかったんです。家族を突然失った人が、新たに出会った他者との関係を築き、人生を取り戻す様子を描きたかった」と西川監督は述べています。
突然、身近な人との別れが訪れるかもしれません。しかし、そのような状況になったとしても、日ごろから大切な人たちとの絆を大切にし、愛情を惜しまないことが重要だと改めて実感します。

映画は個々の感性や経験によって評価が分かれるものであり、人それぞれが「良い」と感じる基準は異なると思います。しかし、鑑賞の前と後で自分の中の何かが変わるような作品は「良い映画」だと思います。