Muto Takashi

泉が森の湧水

「今年の最強パワースポット?」と噂される日立市の「泉神社」へ行ってきました。私はパワースポットなど信じないタイプですが、境内にある「泉が森の湧水」の写真が何かの媒体で目に留まり、一度は訪れてみたいと思っていました。実際にその場所に足を運んでみると、湧水が絶え間なく噴き出しているようで、もくもくと湧き上がる音は聞こえませんが、その迫力ある水の勢いに驚かされました。奈良時代に編纂された常陸国風土記の中には、「久慈郡密筑の里」についての記述があります。その中で、「高市と称へるあり。此より東北二里に、密筑里あり。村の中に浄き泉あり。俗、大井といふ。洽く冬温かなり。湧き流れて川となる。夏の暑き時には、遠邇の郷里より酒と肴とを齎賷きて、男女会集ひて、休ひ遊び飲み楽しぶ。其の東と南とは海浜に臨む。石決明・棘甲贏、魚貝等の類、甚多し。西と北とは山野を帯ぶ。椎・櫟・榧・栗生ひ、鹿・猪住めり。凡て海山の珍しき味、悉に記すべからず。」とあり、この場所が「高市」と呼ばれ、そこから北東半里の場所に「密筑の里」があり、村の中には清らかな泉があり、地元の人々は「大井」と呼んでいたこと、泉の水は夏は冷たく、冬は暖かく、湧き流れて川となっています。夏の暑いときには、あちこちの村里から男女が酒や肴を持ち寄ってこの泉に集い、くつろいで飲んだり食べたりして楽しんだと伝えられています。

ネットなどで色々と調べると、美しい湧き水の起源は地形に深く関わっているようです。阿武隈山地は、宮城県南部から茨城県北部にかけて広がっている高地で、南北約170キロメートル以上にわたって連なる山地です。大部分は福島県に位置し、比較的なだらかな山地とされています。実はこの阿武隈山地の南端が、茨城県日立市にあたっているのです。南端に位置することで、阿武隈山地に降った雨が何年もの歳月をかけて地層を移動し、土の中で水が何度もろ過されて、日立市の地下水源となって現れる仕組みです。地層は石灰岩を多く含む場所が多いそうで、カルシウムやミネラルなどを豊富に蓄えた栄養分たっぷりの湧き水が出来上がるのだとか。きれいなだけでなく、栄養分も豊富で昔から人々の生活を潤してきた理由が分かるような気がしました。

時期によって、場所の雰囲気も変わると思うので、時間ができたらまた機会を見て訪れてみようと思います。